虫歯を治療する際、詰め物・被せ物には金属が使われることがあります。一般的には銀歯と呼ばれていますが、実際には銀・金・パラジウムなどの金属を混ぜた合金が治療に利用されています。
一方で、腕時計やネックレスなどによって皮膚がただれたりする金属アレルギーはよく知られています。同じように、歯科治療で使われる金属によってもアレルギーを起こすことがあり、これは歯科金属アレルギーと呼ばれています。
歯の治療に金銀パラジウム合金が利用されるようになったのは1965年です。当時から金(ゴールド)を使ったいわゆる「金歯」の治療が虫歯治療において優れているという認識はありましたが、ゴールドがとても高価なものであったので、その代わりとして銀歯が利用されることになりました。(※1)
当時の報告書では「銀歯は許容される最低限の材料」という風に言われており、いずれはゴールドを容易に使えるようにすべきとも言及されていますが、現在ゴールドは当時よりも高価なものになってしまい、銀歯の使用もそのままとなっています。
銀歯は保険診療で受けることができる安価な治療方法ではありますが、昔と変わらず必要最低限の材料であることに違いなく、必ずしも最適な材料ではないことがわかります。
※参考文献1)この報告書によれば、1965年当時のわが国の現状を踏まえて、インレーおよびクラウンブリッジ用の合金として金銀パラジウム合金は、許容される最低限の材料であると述べられており、「18K以上の高品位金合金の使用を適当とし、少なくとも14Kより高品位の金合金を推奨するとともに、将来は金合金の使用を容易にするための価格調整が望ましい」とした当時の日本歯科医師会調査室第16補綴部会、第19理工学部会の意見が付記されている。
腕時計やネックレス・ピアス等がアレルギーの原因になる理由は、汗などによって金属製品がイオン化して金属イオンの漏出が起こり、皮膚のたんぱく質と結合することで拒絶反応を起こすためです。こういった症状は金属接触アレルギーと呼ばれます。
一方、お口の中の金属は唾液により常に湿潤で、食品による温度変化も受けやすい環境にあります。金属がイオン化する状況が常にあるので、漏出した金属イオンは粘膜や腸などから吸収されるため、お口の中から全身に行き届いていることになります。(※2)
全身に回った金属成分は色々な箇所から体外に排出されるため、銀歯と接触していない手や足に炎症があらわれる場合があります。このような症状は全身性金属アレルギーと呼ばれ、銀歯等の歯科金属が原因である可能性も十分にあり得るのです。
※参考文献2)一般的に金属アレルギーを引き起こすには、問題になる金属がイオンになることが前提である。イオン化の条件は、口腔内なら唾液を介して、皮膚なら汗を介して起こり、皮膚、口腔粘膜、消化管で吸収され、その金属イオンが生体の組織と反応し半抗原となり反応が現れる。
口内炎がよくできたり、舌の痛みを感じることがあります。
唇や顔付近の皮膚に腫れやかぶれが出ることがありあます。
手のひらや足裏などの全身にアトピー性皮膚炎のような炎症が起こることがあります。
手のひらや足裏に水ぶくれや膿が沢山できる症状も稀に起きることがあります。
漏出した金属成分によって舌にある味覚を感じる部分に影響が出ると、味覚の異常が起こる場合があります。
金属アレルギーによって、肩こりや頭痛・めまいといった不定愁訴(原因不明の体調不良)が現れることがあります。
歯医者で歯科金属アレルギーの根本的な原因(金属修復物)の除去ややりかえは行うことができますが、既に発症した炎症を治療するためには皮膚科で診断していただく必要があります。
皮膚の炎症はかゆみや痛みを伴う場合もありますので、皮膚科で正しい診断を行ってもらい必要により治療薬を処方してもらうようにしましょう。
総合病院などではアレルギーを起こす金属を特定することができるパッチテストを行っている場所もありますので、受診時の参考にしてみてください。
アレルギーを無くすためには、お口の中でアレルギーの原因を取り除く必要があります。歯科金属アレルギーの場合は歯の治療で使われた金属を取り除いて、別の材料でやりかえることでアレルギーの緩和が期待できます。
コンポジットレジンは歯の治療で使える樹脂材料で、主に小さな虫歯を治療する際に利用される材料です。
大きな虫歯に使われるインレー(銀歯)などのやりかえには向きませんが、保険診療の中で行える金属を使わない治療として有効と言えます。
セラミックは焼き物などに使われる陶材を使った材料です。
天然の歯に近い色合いと美しさが特徴で、鉱物を主成分としているためアレルギーを起こす心配はありません。
ジルコニアはセラミックよりも硬い材料で、宝石の様な輝きから模造ダイヤモンドとしても利用される材料です。
歯科で利用するジルコニアは天然の歯に近い色合いに調整されますが、非常に硬いので力のかかる奥歯への利用に向いています。
強度を確保する目的で金以外の複数の金属を混ぜるため、絶対にアレルギーを起こさない材料とは言い切れませんが、歯にしっかりとはまる適合の良さや、虫歯になりにくいといった特徴を考慮して選ばれる方も多い材料です。
現在、インプラント治療にはチタン製のものが多く使われています。これは、チタンが骨と結合して強固に固定される性質を利用するためです。金属を使わないインプラントも存在しますが、扱っている歯科医院は非常に限られています。ですので、インプラント治療はほとんどの場合で金属が使われています。
しかし、チタンにアレルギー反応を示す方も少なからずおられますが、イオン化しにくいとも言われています。チタンは非磁性(磁場に反応しないこと)のため、MRIも問題なく利用可能ですので、医療現場においては身体に埋め込む金属としてチタンは頻繁に使われています。心配な方はパッチテストを受けてみましょう。
ですが、チタンも同様に絶対にアレルギーを起こさない材料ではありません。複数の研究で約数%程度の人がチタンに対しアレルギー反応を示すことが示唆されているので、過去に装飾品等でアレルギー様の症状が出た経験のある方は、安全な治療のためにも事前にパッチテストなどで調べることを推奨しています。(※3)
※参考文献3)インプラント術前の患者102名にパッチテストを実施し、チタンアレルギー陽性者は7名(陽性率6.9%)で、硫酸チタンは7名中6名が陽性を示し、塩化チタンでは6名(1名は実施なし)全て陽性であった。これらのチタン陽性患者は、金属アレルギーの既往があった患者1名、アレルギー性疾患を有する患者4名、既にインプラント体が埋入されていた患者 1名、下顎骨骨折のため金属プレートが使用されている患者1名、金属アレルギーの感作を疑わせる既往のない患者2名であった。また、すべてのチタン陽性患者でチタン以外にも1種類以上の陽性金属を認め、金やパラジウムに反応していた。
逆に、金属アレルギーが無い方にとって保険診療の治療は安価で有用な治療とも言えます。大事なことは、自身にとって最適な歯の材料を選ぶことができる歯科医院で治療を受けることにあると考えられます。
当院では保険診療・自由診療を含めての治療をご提案できますので、金属アレルギーや歯の材料についてお悩みの方は、お気軽当院にお越しください。
この記事の編集・責任者は歯科医師の西森智です。
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