虫歯治療で歯を削った際に扱う詰め物や被せ物のことは「
歯科治療において金属は古くから利用され、日本では銀歯の詰め物や被せ物が広く利用されてきました。
お口の中に入れるものは安全なものにしたいと考えるのが一般的です。しかし、歯に使う金属は保険診療で扱われていることから、何となく安全なものであると思っておられる方が多いですが、ご存知の通り金属の中にはアレルギーを起こすものも多く存在します。つまり、歯の治療で金属を使うことは全ての人にとって絶対に安全とは言い切れません。
金属のアレルギーには個人差がありますが、歯科治療で使われる金属の中にもアレルギーが起こることで知られているものはいくつか存在します。このページでは、歯の治療で使う金属がどのような症状を引き起こす可能性があるのかを解説いたします。
枚方くずはアップル歯科 歯科医師
近年では歯科治療に用いる材料が進歩して、樹脂素材やセラミック素材も主流になってきていますが、まだまだ金属素材もよく使われています。また、昔治療した金属素材がそのまま残っているという方も多くおられます。
自身の歯に使われている金属が何か理解して、どのような対処方法があるか詳しく解説いたします。
保険診療で虫歯を治療する際に使われる金属の歯は一般的には銀歯と呼ばれていますが、見た目が銀色なだけで、銀だけで作られている訳ではありません。実際には銀・金・パラジウムなどの金属を混ぜた合金が治療に利用されています。また、以前は水銀や銀などを合わせたアマルガムという合金も使っていました。
これらの歯科治療で使われる金属は、長期間使用しているとアレルギー反応を起こすことがあり、このような症状は歯科金属アレルギーと呼ばれています。
日本で歯の治療に金銀パラジウム合金が利用されるようになったのは1960年代です。当時から金(ゴールド)を使ったいわゆる「金歯」の治療が虫歯治療において優れているという認識はあったようですが、ゴールドがとても高価なものであったので、その代わりとして銀歯が利用されることになりました。(※1)
当時の報告書では「銀歯は許容される最低限の材料」という風に言われており、いずれはゴールドを容易に使えるようにすべきとも言及されています。しかし、現在ゴールドは当時よりも高価なものになってしまい、銀歯の使用もそのままとなっています。
銀歯は保険診療で受けることができる安価な治療方法ではありますが、昔と変わらず必要最低限の材料であることに違いなく、必ずしも最適な材料ではないことがわかります。
※参考文献1)この報告書によれば、1965年当時のわが国の現状を踏まえて、インレーおよびクラウンブリッジ用の合金として金銀パラジウム合金は、許容される最低限の材料であると述べられており、「18K以上の高品位金合金の使用を適当とし、少なくとも14Kより高品位の金合金を推奨するとともに、将来は金合金の使用を容易にするための価格調整が望ましい」とした当時の日本歯科医師会調査室第16補綴部会、第19理工学部会の意見が付記されている。
腕時計やネックレス・ピアス等がアレルギーの原因になる理由は、汗などによって金属製品がイオン化して金属イオンの漏出が起こり、皮膚のたんぱく質と結合することで拒絶反応を起こすためです。こういった症状は金属接触アレルギーと呼ばれます。
一方、お口の中は唾液などで常に湿潤で、食品による温度変化も受けやすい状態です。そういった環境に金属があると、常にイオン化しやすい状況にあることになります。お口の中で漏出した金属イオンは粘膜や腸などから吸収されるため、全身に行き届いていることになります。(※2)
全身に回った金属成分は色々な箇所から体外に排出されるため、銀歯と接触していない手や足に炎症があらわれる場合があります。このような症状は全身性金属アレルギーと呼ばれ、銀歯等の歯科金属が原因である可能性も十分にあり得るのです。
※参考文献2)一般的に金属アレルギーを引き起こすには、問題になる金属がイオンになることが前提である。イオン化の条件は、口腔内なら唾液を介して、皮膚なら汗を介して起こり、皮膚、口腔粘膜、消化管で吸収され、その金属イオンが生体の組織と反応し半抗原となり反応が現れる。
口内炎がよくできたり、舌の痛みを感じることがあります。
唇や顔付近の皮膚に腫れやかぶれが出ることがありあます。
手のひらや足裏などの全身にアトピー性皮膚炎のような炎症が起こることがあります。
手のひらや足裏に水ぶくれや膿が沢山できる症状も稀に起きることがあります。
漏出した金属成分によって舌にある味覚を感じる部分に影響が出ると、味覚の異常が起こる場合があります。
金属アレルギーによって、肩こりや頭痛・めまいといった不定愁訴(原因不明の体調不良)が起こる可能性があります。
歯医者で歯科金属アレルギーの根本的な原因(金属修復物)の除去ややりかえは行うことができますが、既に発症した炎症を治療するためには皮膚科で診断していただく必要があります。
皮膚の炎症はかゆみや痛みを伴う場合もありますので、皮膚科で正しい診断を行ってもらい必要により治療薬を処方してもらうようにしましょう。
総合病院などではアレルギーを起こす金属を特定することができるパッチテストを行っている場所もありますので、受診時の参考にしてみてください。
アレルギーを無くすためには、お口の中でアレルギーの原因を取り除く必要があります。歯科金属アレルギーの場合は歯の治療で使われた金属を取り除いて、別の材料でやりかえることでアレルギーの緩和が期待できます。
現在、金属を使わない素材の選択肢は豊富で、保険診療から自由診療まで幅広く扱っている医院も多くあります。基本的に、見た目や美しさを重視する場合は自由診療の素材である事が多いです。
治療の内容 | オールセラミックインレーによる補綴のやりかえ (第二大臼歯・第一大臼歯・第二小臼歯 3歯) |
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期間・回数 | 3週間/3回(カウンセリング・検査含む) |
費用 | 自由診療:セラミックインレー(50,000円)×3歯 計150,000円(税込165,000円) |
リスク・副作用 |
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コンポジットレジンは歯の治療で使える樹脂材料で、主に小さな虫歯を治療する際に利用される材料です。
大きな虫歯に使われるインレー(銀歯)などのやりかえには向きませんが、保険診療の中で行える金属を使わない治療として有効と言えます。
セラミックは焼き物などに使われる陶材の材料です。基本的に自由診療でのみ使われます。
天然の歯に近い色合いと美しさを実現できる事が特徴で、さらに陶材のため金属アレルギーを起こす心配がありません。
ジルコニアはセラミックよりも硬い材料で、セラミックの一種でもあります。加工の方法によっては模造ダイヤモンドとしても利用されることがあります。
歯科で利用するジルコニアはセラミックほどではありませんが天然の歯に近い色合いに調整され、非常に硬いので力のかかる奥歯への利用に向いています。
強度を確保する目的で金以外の複数の金属を混ぜるため、絶対にアレルギーを起こさない材料とは言い切れませんが、歯にしっかりとはまる適合の良さや、虫歯になりにくいといった特徴を考慮して選ばれる方も多い材料です。
現在、インプラント治療にはチタン製のものが多く使われています。これは、チタンが骨と結合して強固に固定される性質を利用するためです。金属を使わないインプラントも存在しますが、扱っている歯科医院は非常に限られています。そのため、インプラント治療はほとんどの場合で金属が使われています。
しかし、チタンに対してアレルギー反応を示す方も少なからずおられるため、金属アレルギーの既往歴がある方は注意が必要です。(※3)チタンはイオン化しにくい金属で、MRI検査に引っかからない非磁性(磁場に反応しない性質)のため、医療現場においては身体に埋め込む金属として頻繁に使われています。歯医者以外でも医療現場ではよく使われる金属のため、心配な方はパッチテストを受けてみましょう。
※参考文献3)インプラント術前の患者102名にパッチテストを実施し、チタンアレルギー陽性者は7名(陽性率6.9%)で、硫酸チタンは7名中6名が陽性を示し、塩化チタンでは6名(1名は実施なし)全て陽性であった。これらのチタン陽性患者は、金属アレルギーの既往があった患者1名、アレルギー性疾患を有する患者4名、既にインプラント体が埋入されていた患者 1名、下顎骨骨折のため金属プレートが使用されている患者1名、金属アレルギーの感作を疑わせる既往のない患者2名であった。また、すべてのチタン陽性患者でチタン以外にも1種類以上の陽性金属を認め、金やパラジウムに反応していた。
インプラント以外に、金属が使われた歯の治療法として入れ歯が挙げられます。保険診療で作成できる入れ歯にはクラスプ(金属の留金)がついており、着脱可能ですが長期間装着することには変わりありません。自由診療で作られる入れ歯も、金属床義歯などは、一般的な義歯よりも多く金属が使われています。
入れ歯のクラスプにはニッケルクロムやコバルトクロムという金属がよく使用されており、これらもやはりアレルギーを起こしやすい金属として知られています。入れ歯をしていて金属アレルギーの疑いがある方は、一度歯科医院で別の治療方法がないか相談してみることをお勧めいたします。
逆に、金属アレルギーが無い方にとって保険診療の治療は安価で有用な治療とも言えます。大事なことは、自身にとって最適な歯の材料を選ぶことができる歯科医院で治療を受けることにあると考えられます。
当院では保険診療・自由診療を含めての治療をご提案できますので、金属アレルギーや歯の材料についてお悩みの方は、お気軽当院にお越しください。
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この記事の編集・責任者は歯科医師の西森智です。
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