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歯列矯正とは、不正咬合の治療です。不正咬合とは歯並びや咬み合わせが良くないことを指し、これによって日常生活に支障が出たり、将来的に歯を失う原因になります(※1)。この不正咬合を改善することで、日常生活への影響を予防し、将来的な歯の健康を守ります。
歯並びが悪いと、歯の重なり部分や凹凸に歯ブラシが届きにくく、プラークが残りやすいために虫歯や歯周病に罹患するリスクが高まります。また、咬み合わせによっては集中的に咬合力(噛む力)がかかるため、破損やヒビが入りやすくなり、そこから虫歯になったり、破折を起こす原因となります。歯列矯正により咬み合わせを改善することで、これらのリスクを軽減します。
審美目的の歯列矯正はもちろんですが、不正咬合を改善することで、キレイな歯並び、すなわち付随的に審美改善を伴います。また、Eラインという鼻先から顎の先端を結ぶ線の内側に口元が収まることで、美しい横顔になることもあります。歯列矯正は咬み合わせを整えると同時に、美しい口元・横顔を作る治療でもあります。
不正咬合が原因で、顎関節症という顎の疾患を患うリスクが高まる咬み合わせがあります。歯列矯正で、顎にかかる力を分散することで、顎関節症を未然に防ぐことができる場合があります。
咬み合わせを整えることで、歯が均一に接触し、咀嚼効率を高めることができます。しっかり咀嚼できるようになると、胃や腸への負担を軽減したり、特定の歯に集中的にかかっていた力を分散し、将来的にその歯を守ることにも繋がります。
不正咬合が原因となる見た目のお悩みを改善します。出っ歯・受け口・ガチャ歯・八重歯・すきっ歯など、不正咬合の中にはコンプレックスとなるものも多く、それが原因で口を開けて笑えなくなったり、人との関わりが億劫になってしまうこともあります。歯列矯正でこのコンプレックスを解消することで、性格や印象まで良くなることもあります。
※1)上下顎前歯の前後関係は正常847.6%,上顎前突15.4%,反対咬合0%であった。垂直的関係は正常86.5%,過蓋咬合13.5%,開咬0%であった。
個人差はありますが、歯列矯正中は装置による矯正力が歯にかかるため、多少なりとも痛みや違和感を感じることがあります。また、咬み合わせが変わり歯の接触位置が変わるため、治療後しばらくは「うまく噛めない気がする」「正しく噛む位置がわからない」など、正しい咬み合わせになっても慣れるまでは違和感を感じることもあります。
歯列矯正中は、ブラケットやワイヤーなどを歯に付けたり、マウスピースで歯全体を覆うため、虫歯・歯周病菌が溜まりやすい状態になります。ワイヤー矯正はブラケット周りにプラークが溜まりやすく、マウスピース矯正はプラークの取り残しの上に蓋をしてしまうため、それぞれ虫歯や歯周病が繁殖する原因となるため、矯正治療中は特に念入りにセルフケアを行う必要があります。
歯列矯正は、治療が終わって歯並びが整っても、歯がもとに戻ろうとする力が働くことで、後戻りを起こすことがあります。特に矯正治療終了後すぐは、この後戻りの力が強く働くため、リテーナーという保定装置で後戻りを予防する必要があります。
歯列矯正は歯に矯正力をかけるため、稀に歯根吸収(歯の根が短くなる)・骨性癒着(歯根と骨がくっついてしまう)・神経の失活(歯の神経が死ぬ)・歯肉退縮(歯ぐきが痩せる)・顎関節症(顎の痛みや違和感、異音)などの偶発症を起こす場合があります。
歯列矯正や矯正に伴う抜歯が原因となり、顔が面長になったり、ほうれい線などのシワが深くなることで老け顔になるなど、顔貌の変化がマイナスに働く場合があります。
歯列矯正で顔貌のマイナス変化が起こると、キレイになるために行った歯列矯正のはずが「不細工(ブサイク)になった」と後悔する原因となります。
このブサイクになる原因には、それぞれ理由があります。
ブサイクになる原因はいくつかありますが、主に皮膚の弛み・筋肉の衰え・歯の移動に伴う変化によって、マイナスに影響することがほとんどです。
ほうれい線が濃くなる
出っ歯や口ゴボなどの歯を引っ込めると張っていた皮膚に弛みがでることでほうれい線が濃くなり、老けて見えることがある
顔が面長になる
矯正中は矯正装置の影響で食欲や接触回数が抑えられ、顔が痩せたり顎の筋力が落ちることがあり、結果として面長になることがある
鼻の下が長くなる
前に出ていた歯を引っ込めることで、前に張り出していた軟組織が下に落ちることで、鼻の下が長くなったように見える
出っ歯になった
歯を並べるスペースを確保せずに矯正を行なうことで、前に歯が張り出し、出っ歯になることがある
歯列矯正でブサイクになる失敗の原因は、主に「歯科医側」の失敗と、「患者側」の失敗、それと「歯科医と患者の認識のズレ」から起こります。
歯科医師側の失敗原因は「資料不足」「経験・知識不足」「説明不足」等による治療計画の失敗です。レントゲンや写真だけでなく、セファログラムやCT、光学印象などの資料を撮影せず(できず)に治療計画を立てたり、そもそも矯正の知識が薄い歯科医師が手を出しやすいマウスピース矯正等で治療を行うことで、顔貌の変化を予測できない、説明できない・していないなど、治療計画自体に問題が生じます。
患者側の問題は、無理な要望や自己管理不足、説明の理解不足などが原因となります。例えば抜歯推奨の矯正に「抜歯はしたくない」という要望を出したり、矯正治療合わせてにダイエットを行ったり、清掃不良により虫歯や歯周病に罹患することが原因となったり、リスクや顔貌の変化予測の説明を受けていたにも関わらず、予防手段を取らなかったということもあります。
また、歯科医師は「咬み合わせの改善」、患者は「審美改善」と、目的やゴールの相違が失敗の原因になることもあります。
歯列矯正で失敗・ブサイクにならないために患者側ができるのは歯科医選びです。
レントゲンだけでなく、セファログラム・模型や光学印象・CT・口腔内写真や顔貌・姿勢写真など、たくさんの資料を採得する医院は、歯並びだけでなく骨格やEラインなど、様々な要素を検討して治療計画を立てる医院と言えます。
歯列矯正は歯科医師免許があれば提供できる治療ですが、矯正学会等の認定医や専門医が診断を行っている医院は、経験や知識の補完ができていると考えやすいです。特にワイヤー矯正は、認定医や専門医の専門的な診断が必要となります。
治療や要望を聞くだけでなく、メリット・デメリットにベネフィットやリスクをしっかり説明しているかどうかがポイントです。また、診療台の上で話をするよりも、しっかりと個室で時間をとって説明をしている方が良心的と言えます。
歯列矯正を検討するなら、複数の歯科医院に相談するのは一つの手段です。これはドクターショッピングと行って、嫌がる歯科医院もあります。しかし、矯正治療は患者様にとって今後の人生を左右する治療となる場合もあります。ネットやSNSの広告・評判だけで決めるより、実際に歯科医院に出向いて判断することはとても重要です。ネット「矯正治療の得意な歯科医院10選」というような記事は、そもそもその選定方法が不明瞭な場合もあったり、費用を払うことで掲載されるものもあるようです。
また、口コミに関してもすべてを鵜呑みにするのはよくありません。例えば歯科医院がステマを行っている可能性はゼロではありませんし、「予約が取りにくい」というレビューで評価を落としている歯科医院は「人気がある」「多くの人が予約をしている」という逆の評価もできます。
まずはネットや口コミなどで目星を付け、複数の歯科医院で直接話しを聞くことが、手間はかかっても歯科医師選びで失敗しない手段となります。
歯列矯正のみならず、歯科治療においてはカウンセリングはとても重要になります。矯正治療は単に歯を動かすだけでなく、お口の中全体のバランス、顔の形状、咬合の調整など、多面的なアプローチが必要です。
治療前のカウンセリングでは、患者さんの期待や懸念を明確にし、それに基づいて治療計画を立てることが大切です。これにより、治療後の外見の変化についても理解を深め、期待に沿った結果を得やすくなります。
また、顔の印象や歯茎の見え方など、見た目に関する詳細な話し合いも重要です。患者さんの「なりたい姿」をしっかりと把握し、それを実現するための治療を提供することが、成功への鍵となります。
加えていうと、矯正治療は治療期間の長い治療です。そのため、担当する歯科医師と患者さんの相性もとても重要になります。カウンセリングで、「しっかりと説明してくれるか」「自分のことを考えてくれているか」など、歯科医師との相性を確認する場としても役立ちます。
歯列矯正後のお口の中のケアは、美しい笑顔を長く保つために非常に重要です。矯正治療が終わった後も、歯並びを維持するためには、定期的なチェックと適切なセルフケアが必要となります。
栄養不足や食事が原因で面長・シワが濃くなった場合は、矯正を終えることで改善することが多いです。しかし、それでもほうれい線や顔貌の変化が気になる場合は、口輪筋や表情筋のトレーニングを行うことで改善につながることがあります。
トレーニングは、矯正治療中でも気になり始めたら行うことが重要です。トレーニング方法については、歯科医師に指示を仰ぐのも良いでしょう。
それと重要なのは、後戻りを予防するための保定です。矯正治療後は矯正期間と同程度を目安にリテーナーという保定装置を装着することが重要です。保定期間は歯科医師と相談し、毎日装着することを徹底しましょう。取り外しが面倒な場合は、フィックスリテーナーという取り外し不要のリテーナーもあります。
虫歯や歯周病から歯を守るには、毎日の歯磨きはもちろん、フロスや歯間ブラシを使った丁寧な清掃が大切です。矯正治療後は、ワイヤー矯正の場合ブラケットという歯に貼り付ける装置の付近にプラークが溜まりやすく、ホワイトスポットという白い点ができることがあります。このホワイトスポットは、溜まったプラークが原因で脱灰という歯のエナメル質からリンやカルシウムが溶け出して起こる初期虫歯のようなものです。そのため、いくら歯磨きをしても治りません。
ホワイトスポットを治すには、再石灰化を促す必要があります。そのためには、口腔内が酸性になる状態をコントロール(間食を控える等)し、食事のたびに歯磨きで歯垢を除去する必要があります。また、フッ素塗布やフッ素入歯磨き粉なども有効です。ただし、長期間改善しないホワイトスポットは、治療が必要になる場合もあります。
矯正治療でブサイクになってしまったら、リカバリーが必要な場合や、再矯正で改善できることがあります。
例えば「出っ歯になってしまった」という場合、抜歯をして再矯正をしたり、ストリッピングという歯を少しずつ削ってスペースを作ったり、臼歯遠心移動という歯を後ろに送ることで口元引っ込め、改善できる場合があります。また、「前歯が噛まなくなった」という場合も、同様の方法で改善が見込める場合があります。
矯正治療によって歯肉が退縮し、歯が長く見えるようになった場合は、歯肉移植という方法があります。ただし、これはすべての症例に可能な方法ではなく、場合によってはリカバリーが難しいこともあります。
もし、矯正治療後に後戻りが始まったり、早めに歯科医に相談しましょう。後戻りは軽度であればあるほどリカバリーが容易です。「ちょっと動いてきたかな」と思ったら、経過を観察せず早めにご相談下さい。
再矯正をした場合、費用は残念ながら初回の矯正と同程度かかってしまうことも多いです。もちろん、費用に比例して期間がかかることも多いです。目安としては、奥歯を動かす必要・距離があれば初回の矯正と同程度の工程が必要となります。
ただし、後戻りの治療に関しては、早ければ早いほど治療の難易度が下がり、費用や期間も抑えられることがあります。例えば少しの歯の移動なら、アライナー(マウスピース)を使って少額で治療できる場合もあります。
また、医院によっては再治療に関する保証期間を設けていることがあったり、インビザラインなどのマウスピース矯正も、追加アライナーを期間内なら追加費用なしで作成できる場合もあります。
歯列矯正は、患者様にとっては咬み合わせよりも見た目に重点を置かれることが多い治療です。というのも「咬み合わせ」と言っても、患者様にとってはわからないことが多く、どの咬み合わせが正しいのかなど、正直なところ歯科医師でしか判断が難しいものです。
そのため、患者様にとっては「見た目」が矯正治療の大きな判断材料になるわけですが、それが結果として自身が「ブサイクになった」と感じてしまうようであれば、その矯正治療が失敗と感じてしまうのは至極当然の話です。
もちろん咬み合わせを整えることは大切なことですが、それだけではなく見た目に関するご要望を適えることも矯正歯科の大きな役割です。もし、矯正後の仕上がりに満足いかず、リカバリーや再矯正をお考えなら、一度ご相談にお越し下さい。現在の歯並びや顔貌に応じて、どのような解決策・再治療法があるのか、患者様の要望をお伺いしながら提案させていただきます。
この記事の編集・責任者は歯科医師の西森智です。
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